「軽自動車は強度が弱い」「軽自動車は走る棺おけである」という声をよく見かけます。軽自動車乗りや軽自動車をこれから購入しようとしている人にとっては、軽自動車の強度がどうなっているのか気になるところですよね。
軽自動車に乗っていると死亡しやすいのか、最近の軽自動車も以前と変わらず強度が低いのか。気になる疑問の答えを求めるべく、軽自動車と普通車のここ数年の死亡事故件数などを比較してみました。
最近の軽自動車の強度は、どうなっているのでしょうか?
軽自動車の強度に関して
軽自動車の強度は、近年は以前よりもかなり高くなってきています。それでも、普通車と比較すれば「マシ」というレベルにすぎません。普通車と軽自動車では重みが違うというのもありますが、強度に関連しているもので最も違いの出るものは材料。
最近の軽自動車の傾向
最近の軽自動車だと、さらなる軽量化をしつつ強度を高めようと高張力鋼鈑・超高張力鋼鈑を使うようになっている。これは張力が高い鋼鈑のこと。イメージ的には鋼鈑を四方八方から見えない手が全力で引っ張っているような状態。鉄と比べ衝突強度も高いので、引っ張って伸ばした状態でも従来の鉄の衝突強度と同等かそれ以上を誇ります。
それと同じことがおきているのが高張力鋼鈑。
引っ張る力がさらに強いのが超高張力鋼鈑というイメージです。高張力鋼鈑と超抗張力鋼鈑を多く使うことにより、従来の強度を保ったまま鋼鈑を薄くし車を軽量化。燃費の向上や走行性能の向上に繋がっています。
普通車と比べるまだ劣る
そういう素材が使われるようになり、昨今は軽自動車の強度が少しは上がっています。ただ、過去の軽自動車と比較したときの「強度が高い」という意味であり、普通車と比べると、やはり劣る。普通車は軽自動車に比べ、極限まで軽量化する必要性も需要もあまりありません。
そのため、ボディに使われている金属も厚みがあり、衝突をした時の車の強度は高い。軽自動車がぺしゃりと大きくへこんでしまうのに対して、普通車はそこそこへこむといった程度。場合によっては、軽自動車は完全にぺっしゃんこになってしまうこともあったり、跡形もなくなってしまうという場合もあります。強度の強さが普通車のほうが勝っているのは、重量的に見ても当然。関取と一般人が衝突すると一般人が大怪我を負ってしまうように、軽自動車も普通車と衝突すると大怪我を負ってしまうものです。それでも強度を少しでも高めようとする姿勢があるということが大切ですよ。
2015年度 車事故を普通車と軽自動車で比べてみる
毎年、車関係の事故は後を絶たないもの。普通車と軽自動車で別々にデータがあるので、比べてみましょう。
軽自動車と普通車の死亡事故比較
軽自動車と普通車の死亡事故件数をそれぞれの全体の事故件数と一緒に表にしてみました。この表は、公益財団法人交通事故総合分析センターの交通事故統計年報平成22年版から25年版まで。250ページから252ページを参考にして作成しています。
原則として2年前までのデータのみがフリーでのダウンロード可能になっています。去年のものに関しては書籍版とデータ版が有料で購入可能ですが、今回は平成25年度までで表を作成しました。ご了承ください。
相互事故 | H22年度 | H23年度 | H24年度 | H25年度 |
---|---|---|---|---|
普通車事故件数 | 316,110件 | 297,973件 | 285,079件 | 266,326件 |
軽自動車事故件数 | 139,767件 | 138,110件 | 138,319件 | 136,349件 |
普通車死亡事故件数 | 599件 | 535件 | 538件 | 502件 |
軽自動車死亡事故件数 | 339件 | 339件 | 321件 | 302件 |
まず、相互事故・・・つまり、自動車同士の事故の場合を見ていきましょう。
この表は、普通車と軽自動車がそれぞれ第一当事者である事故のデータを使っています。ここからわかるのは、軽自動車の乗員の死亡件数などではありません。乗員か相手かどちらかが亡くなった場合での死亡事故件数になります。ただ、先述したとおり軽自動車のほうが強度が弱くなっていることを考えると、軽自動車の事故件数は軽自動車が相手を殺めてしまうというよりは軽自動車の乗員が亡くなってしまうと考えるのが必然でしょう。
単純な件数だけ見ると、明らかに普通車のほうが死亡事故件数は多いですね。
単独事故 | H22年度 | H23年度 | H24年度 | H25年度 |
---|---|---|---|---|
普通車事故件数 | 8,684件 | 7,752件 | 6,954件 | 6,280件 |
軽自動車事故件数 | 5,574件 | 5189件 | 4,834件 | 4,426件 |
普通車死亡事故件数 | 292件 | 271件 | 237件 | 283件 |
軽自動車死亡事故件数 | 161件 | 152件 | 145件 | 198件 |
これは単独事故の場合の件数です。単独事故なので、亡くなったのは確実にその乗員になります。こちらも普通車のほうが単純に件数だけは多くなっていますね。
軽自動車と普通車、死亡事故率比較
H22年度 | H23年度 | H24年度 | H25年度 | |
---|---|---|---|---|
普通車死亡率(相互) | 0.189% | 0.180% | 0.189% | 0.188% |
軽自動車死亡率(相互) | 0.243% | 0.245% | 0.232% | 0.221% |
普通車死亡率(単独) | 3.363% | 3.496% | 3.408% | 4.506% |
軽自動車死亡率(単独) | 2.888% | 2.929% | 3.000% | 4.474% |
相互事故での死亡率は軽自動車のほうが高く、単独自己での死亡率は普通車のほうが圧倒的に高くなっています。これを見ていると、単独事故の場合は軽自動車のほうが安全性が高く、相互事故の場合は普通車のほうが安全性が高いということになりますね。
軽自動車はどんなときも死亡しやすいわけではないということがわかりました。
比較結果まとめと強度に関して
こうして比較してみると、やっぱり軽自動車のほうが強度は低いのかと思わざるを得ませんね。普通車の死亡事故件数が多いのは単に普通車に乗っている人の人口が多いということもあるのでしょう。相互事故での死亡率に関しては普通車のほうが低いことを考えると、強度は普通車には勝てないということが明らかになりました。
なんども述べていますが、軽自動車は軽量化を命題に掲げています。普通車よりも軽く小さい。大きく重い普通車と衝突すると軽自動車のほうが死亡率が高くなるのは当然です。それよりも注目して欲しいのが推移。
相互事故・単独事故ともに軽自動車の事故件数が減っています。さらに相互事故での死亡率も減っている。単独事故での死亡率が逆に跳ね上がっているということを考えると、最近の軽自動車は以前に比べてかなり強度が上がっていると考えられます。
単独事故での安全性・・・つまり壁やガードレールなどに衝突した時の安全性というのは重いほうが低くなるというのが一般的な考えです。軽いほうが動かないものにぶつかったときの衝撃が小さくなります。
衝撃というのは、動いている物体の重さと速度で変わるもの。単独事故での死亡率が上がっているということは軽自動車が重くなっているということです。さらに相互事故での死亡率が年々下がっていることと合わせて考えると、最近の軽自動車は軽さの追求にひと段落がつき、こんどは強度を重視し始めていると言えるかもしれません。
その証拠になるかはわかりませんが、近年出た車種のホームページには強度をアピールする項目が増えています。結果、普通車よりも強度は劣ってしまうが、年々強度は増していっているということでした。
 
車の乗り換えで「ほとんどの方が損をしている」その盲点とは。
私はこの方法で毎回新車を30万円安く購入しています。覚えておいて損はありません。
>鋼鈑を四方八方から見えない手が全力で引っ張っているような状態。引っ張っている力が強いから強度が増しているというのが、高張力鋼鈑です。
高張力鋼の定義が間違っています。
鉄にC,Si,Mn,Tiなどの合金元素が添加された、引張や圧縮に強い鉄鋼材料です。
引っ張っているから高強度になるわけではありません。
名無し様
ケーラヴをご覧いただきありがとうございます。
ご指摘の件ですが、再度調べてみたところ、仰る通りでございました。
こちら修正させていいただきました。
ありがとうございます。