自己主張の弱い内外装でありながら、自己主張の強い性能を搭載したエントリーモデルの上位モデルがアウディS1なんです。
近年ではこういった上位モデルはベースモデルと大きくは見た目を変えないというのが主流で、アウディS1もそれにならっています。強いて見た目の違いを挙げるなら、ヘッドライトが変わってシャープな印象になったくらいですかね。
ただ、中身は完全に別物と言っても過言ではありません。
A1とは異なる性能、走行感覚、足回り……装備。そういったS1の特徴を、これからじっくりと紹介しましょう。
アウディ S1 グレード表
グレード名 | 価格 |
---|---|
S1 | 4,230,000円 |
単一グレードで勝負に出たという感じがしますが、限定販売モデルに「quattro limited edition」というものもありました。
115台限定販売車であり、もう既にラインナップから外れているので、ここでは割愛します。中古車でなら、もしかしたら手に入るかもしれませんが、2016年発売なので、2017年8月現在、まだ中古市場には出回らないでしょうね。
また、単一なのはグレードだけではありません。
ミッションもひとつだけなんです。アウディと言えばATにSトロニックを搭載した形が一般的ですが、S1は6速MTのみで、Sトロニックは搭載されていません。
駆動方式はクアトロ(4WD)なので、これ以上重量を上げたくないため、軽量化の一環として6速MTのみにしたのでしょう。
ただ、6速MTのみという思い切った設定が、車好きの心を掴んでいます。
アウディでMT車は案外珍しいですから、それがエントリーモデルの上位モデルとしてラインナップされることの意味はとても大きいですよね。思い切ったグレード設定とミッションの設定に、感服してしまいます。
各グレードの特徴や違いを解説
A1の高性能モデルということで、第一に気になるのは「性能」ですよね。
どんな性能を持った車なのか、走り心地や走行感覚はどのようになっているのか、性能や走りに関する特徴を説明したいと思います。
S1
A1は1.0~1,4L直列3気筒ターボを搭載した車なんですが、S1はなんと2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載しているんです。
その最高出力は170kW/6,000rpm、最大トルクは370Nm/1,600~3,000rpmとA1から大幅に向上しており、最早別物と言えます。
しかも、ミッション、足回り、パワステまでもが別物なんですよ。A1は電動油圧式パワーステアリングですが、S1は電動機械式パワーステアリング。
精度が向上し、S1のパワフルでスポーティな走りに対応しやすくなりました。何から何まで、別物ということですねえ。
走り出しから既に気持ちよさを感じ、少しアクセルを踏んだだけでも楽しくなってきます。
市街地でゆったり走るのも良いですが、やはり郊外や山道・峠道で走らせるのが一番楽しいでしょう。特に、S1の真骨頂はワインディングロードです。
4WDのトルク配分の調整がとても良く出来ているためか、安定感が凄い。連続するコーナリングでも、しっかりラインを捉えてエレガントに曲がってくれます。
何かに導かれて曲がっているかのような、しなやかなコーナリングが特徴的で、どれだけ速度を出していても不安を感じることがありません。
四つの駆動輪が地面をこいでくれているような感覚が伝わってきて、地に足着いた安定感のある加速ができます。加速フィールもとても鋭くて気持ちよく、安定しているだけでなくワクワクまでをも感じさせてくれるんです。
ガツガツとした走りをしながら、4輪でしっかり地面を蹴り上げてくれる。スポーツカー然とした走りの積極性と硬さもありながら、上品でしなやかな印象も受ける。
アクセルを踏み込んで運転していると、ドア窓の景色なんて視界から吹き飛んでしまうくらいに楽しく速いですよ。一瞬にして街路樹は塵と化し、世界にただ一人走っているかのような感覚になる。
他の追随も許さず、徹底的に孤独な走りを極める感覚は、まさにスポーツモデルです。
4気筒でこれだけ走れたら、上出来すぎますよ。
装備を基準に各グレードの特徴を見てみる
性能は文句なしスポーツモデルと言えるような出来で、これを4気筒で実現しているところにひたすら驚かされます。エントリーモデルの上位としてこれが位置していることにも、驚きを隠せませんよね。非常にワクワクしてしまいます。
そんなS1の装備は満足に値するものなのか、WEBカタログから一部抜粋して見ていきましょう。
http://www.audi.co.jp/dam/nemo/jp/catalogue/a1/my17/MY17_A1_DI_1703.pdf
全グレード共通標準装備
- バイキセノンヘッドライト
- LEDリヤコンビネーションライト
- エクステリアミラーハウジング アルミニウムルック
- スポーツバンパー
- アルミホイール5アーム フェセットデザイン コントラスト グレー パートリーポリッシュト
- 225/35R18タイヤ
- セクタークロス/レザーシート
- スポーツシート
- エアコン吹き出し口カラードスリープアルミニウムルック
- ステアリングホイール3スポークレザーマルチファンクション(フラットボトム)
- MMIナビゲーション
- アウディサウンドシステム
- オートエアコン
- センターアームレスト(フロント)
- アウディドライブセレクト+油圧式ダンパーコントロール
- アウディパーキングシステム
まずインテリア関係を見ていきたいと思います。「アルミニウムルック」が多いですが、内装は「黒」に「アルミ」というアウディらしいシャープなものとなっているんです。
スポーツモデルにアルミは付き物、そしてスポーツモデルの内装は黒というイメージがありますよね。
イメージ通りという意味では面白みが無いのかもしれませんが、A1との違いという面で見ると結構面白いです。
装備表では書かれていませんが、メーターはS1専用のものとなっています。不必要なものを全て取り払ったアナログメーターで、視覚的にシンプルでスパルタンなイメージです。スポーツモデルらしさを感じますね。
ランバーサポートとセンターアームレストを搭載したスポーツシートもそうですし、派手は変更を控えながらしっかりスポーツモデルとして仕上げているところに感心させられます。
スポーツモデルの演出は、インテリアだけではありません。
油圧式ダンパーまで調整可能な「アウディドライブセレクト」が、搭載されているんです。
「効率モード」「オートモード」「ダイナミックモード」の三つのモードが用意されていて、ダイナミックモードにすると派手な演出を楽しむことができます。
エンジンパワー、加速フィール、足回り……全てが力強くスポーティになります。
ただ、それだけならよくある走行モード調整ですよね。S1のアウディドライブセレクトは、それだけでは無いんです。元々は控えめなエンジン音が、ダイナミックモードに変更するだけで気持ち良く派手なものとなるんですよ。
ブゥォォオオオンという重低音が鳴るようになるだけでなく、室内にいても気持ち良いエンジン音が聞こえるように音が出た後にも調整をしてくれているんです。
運転席までダイナミックな音がダイレクトに届くのには、思わず笑ってしまいます。
装備に満足というより、こういう細かい「スポーツモデルとしての演出」に抜かりが無い点に満足できるのではないでしょうか。
基本的な装備も整っていて、ナビも付いて演出も怠らない。価格や性能と併せて考えてみても、十分すぎる内容です。
各グレードの評価 こんな方にオススメ!
アウディS1はA1と似たパッケージをまといながら、A1とは別物の中身を持っている面白い車ですよね。性能や足回りなど走りに関わる部分は派手に変更をし、内外装や装備は控えめに変更する……。能ある鷹は爪を隠すのです。
そんなS1の魅力を、ここで再確認してみましょう。
グレード名 | 評価 | こんな人にオススメ |
---|---|---|
S1 | ☆☆☆☆ | 週末ドライブや日常使いで、スポーティに走りたい方へ |
S1の評価
S1の車として評価すべき点は、A1の小さなボディに2.0L4気筒ターボを搭載し、安定感のある車に仕上げているという点です。
少しでも車に詳しい方ならわかるかもしれませんが、この小さなボディにあんなハイスペックエンジンを搭載したら、コントロール不能でちゃんと走らないのではないかという不安が出てきます。
前輪駆動のままだと、その不安通りになったことでしょう。
そこでクアトロを搭載することによって、大きなトルクを4輪に適切に分配することでコントロールを得たわけです。
それを主張するような演出は無いけれども、どんな速度でコーナーに入っても簡単にコントロールできるの葉クアトロの恩恵。知らないうちに活躍してくれている、影の実力者と言えます。
コンパクトカーでは「実用性」重視になりがちですが、S1は走りの楽しさ重視。
普段使いだけでなく、週末ドライブも十分にスポーティに楽しめます。ワインディングを走るのがとても楽しく、気が付いたら市街地を抜け出して山のほうに走りに行っていたなんていうこともあるでしょう。
「ちょっとスポーティな車に手を出してみたい」という初心者の方でも、スポーツモデル大好き人間でも、誰にでもオススメしやすい車です。
ただ、どちらかというと5ドアモデルのSportbackのほうが選びやすいのではないかという点で、☆はマックスでなく四つにとどめました。
アウディ S1の総合評価
ベースとなるA1でも軽やかな走りが楽しめるんですが、S1ともなると軽やかなだけでなく重厚感も得られて車を操っているという感覚がありありと手元から、足元から感じられて楽しいです。
小さな体にハイスペックエンジン搭載という思い切った設定でありながら、じゃじゃ馬にならず誰でもミス無く操れる点は他の車ではなかなか実現できないでしょう。
コーナリング性能の高さによる「高性能だけど落ち着いている走り」はアウディの十八番とも言えますが、クアトロによって、それを遺憾なく発揮できるところが魅力的です。
鋭いけど落ち着いた加速、攻めているのに落ち着いた走り……。
実用でも遊びでも通用するアウディS1は、ライト層からヘビー層までを取り込める、エントリーモデルのスポーツモデルとしてとてもクオリティの高いものと言えるでしょう。
 
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